Mastodonと差別問題

早いもので、1月ももう最終日です。

 つい先日正月だったような気がするのですが、あっという間でした。

 さて、昨日はとある問題により、Mastodon日本語圏がにわかに騒々しくなっていました。

 Mastodon日本語圏における著名なサーバの一つである「Fedibird」の所属ユーザによるトランスジェンダーに対する差別発言があり、それに対する「Fedibird」運営の対応や、Mastodon(に限らず分散型SNS)全体における差別問題への姿勢などが問題になりました。

 そのときに、次のようなハッシュタグが用いられました。

 なお、私・テルミナ™も、リベラル(自由主義者)向けコミュニティ「LIBERA TOKYO」の管理者の立場から、それらに連帯することと致しました

 とはいえ、自分もこの問題の全体像を把握しているわけではありません。


どういう経緯だったのか

 こちらのスレッドで、大まかな話が出ています。

 スレッド先頭の投稿へのリンクを記載致します。

 なお、スレッドの中で、「Fedibird」管理者ののえる氏からのコメントも掲載されています。

 こちらについては、別の方からも「現時点でサーバー管理者が出来うる誠実な回答」と述べられていますが、私も異論ありません。とはいえ、これでは不十分だと考える方がいるのもわからなくはないのですが…。

差別は「見たくなければ見るな」で済まされる問題ではない

 まあ残念ながら、件のハッシュタグが用いられた投稿の中に、自分の視界に入っただけでも、少数ではあるものの「見たくなければ見るな」「自衛せずに要望だけ言うな」などという、事の本質を全く理解していないとしか思えないようなものがありました。

 しかし、先ほどの参考スレッドにもあるように、トランス差別は、社会的にも、世界的にも、日本の法律的にも人権侵害に当たるものです。また、Mastodon自体も反差別を訴えています。つまり、差別主義者や差別容認者はMastodonを使うべきではなく、その手の者たちこそがMastodonから去るべきなのです。

 サーバ管理者に問題への対応を求めるという点も同様で、もしサーバの管理者がそれを放置するようなことがあれば、それこそ当該サーバの関係者、ひいては分散型SNS全体の評判を落としかねません。なお、先述の通りのえる氏からは対応の検討が明言されましたので、今後の展開に期待したいところです。

今回の連帯、個人的には「自戒の意味」もある

 なお、先述の通り、今回は私も「 #トランス差別に反対します 」等に連帯しましたが、これには「自戒の意味」も含まれます。

 実は私はこれまで、トランス問題を含むLGBTQ問題に対する考えについて明言してきませんでした。それは後述する2つの事情によるものです。

 しかし、「差別」と「明確な悪意」や「犯罪行為」は別次元の話であるという当たり前の話を考えれば、差別に反対することと当事者による悪事を批判・糾弾することは矛盾しません。

ケース1:過去に私が関わったLGBTQ当事者の問題

 私がLGBTQ差別問題を考える上でどうしても邪魔になる出来事に、自分が過去に関わったことのあるLGBTQ当事者の件がありました。

 当該人物は、私が記憶している限りでは私が自分の人生で直接的に関わった最初のLGBTQ当事者です。最初の頃はそれなりに仲良くしていたのですが、いつの頃からか露骨に当該人物から悪意を向けられることになり、仕舞いには当時いたコミュニティから、取り巻きを使ってまでして私を追放した挙げ句、Twitterでは見事に相互ブロックになってしまいました。

 自分でも、頭の中では「LGBTQ当事者がみんなそんな感じの人間ではなく、私に悪意を持った決して少なくない人間のうちのひとりがたまたまLGBTQ当事者だった」ということはわかっています。しかし、人生で最初に関わった当事者がそんな人間でしたので、半ばトラウマみたいになってしまったのです。

 私も過去に一度だけ、(自分はLGBTQ当事者ではありませんが)LGBTQ差別反対を掲げる抗議行動に足を運んだことがあります。しかし、その場にいてさえ、過去に自分を苦しめた当事者のことを思い出してしまい、LGBTQ問題に対する正しい考え方を持つ妨げになっておりました。

ケース2:当事者による性的被害

 これは自分自身が直接体験したわけではなく、他人から伝えられた話ではありますが、トランス女性の中に女性に対する性的暴力を働く者がいる、などという話をネット上でされたことがあります。

 自分自身が体験したことではないので、この話そのものもうろ覚えで詳細については覚えていませんが、先述の過去に私と面識があったLGBTQ当事者の話とも相まって、「あり得ない話」とは到底思えませんでした。

 ただ、これにしても、性的暴力を働いた時点でその者は犯罪者であり、差別とは別の次元で糾弾されるべきです。そして、犯罪者に対してはちゃんと犯罪者として糾弾することで、普通に生活しているLGBTQ当事者を差別から守るべきなのです。

Mastodon日本語圏における今後の差別問題への取り組みについて

 今回の問題では、多数の方から差別反対への連帯が表明されました(その一方で差別容認者もあぶり出されましたが…)。

 また、この問題は大規模サーバから中小・零細規模のサーバに至るまで、Mastodon、といいますか分散型SNS(Fediverse)のコミュニティの管理者を含むすべてのユーザに対し、大きな課題を突きつけました。

 差別発言等の有害な投稿にどう対峙すべきか。

 今回はたまたま(?)、日本有数のMastodonサーバであり公式の「joinmastodon.org」に掲載されている数少ない日本語圏サーバの一つでもある「Fedibird」で起きた出来事でもあったため、Mastodon日本語圏内に於いて大きな問題となりました。

 とはいえ、「 #fedibirdはトランス差別している人をBANしてください​ 」というハッシュタグを最初に唱えた方もそれに連帯した方々も、何も問題発言をさっさと見つけてさっさと始末しろと言っているわけではありません。

 サーバ管理者をやっていればわかることですが、24時間365日サーバに張り付いていることなど不可能です。

 これは私に限らず複数のサーバ管理者が言っていることですが、問題発言を見つけたら、出来るだけ詳細な理由を添えて、所属サーバの管理者やモデレータに対して通報して欲しいと思います。のえる氏も、「できる限り理由を明快に挙げた通報にご協力ください」と仰っています。

 まっとうな管理者であれば、24時間以内には何らかの対処をしてくれる(あるいは対応しないという判断を下す)はずです。管理者とは別に副管理者やモデレータのいるサーバであれば、より迅速な対応も期待できます。

 ただ、もし仮に72時間経過しても音沙汰なしと言うことであれば、そんな運営体制のサーバはさっさと見限ったほうがよいでしょう。管理体制がいい加減なサーバからは良質なユーザはどんどん逃げてゆき、やがては淘汰されてゆくことでしょう。そのようなことが出来るのも、分散型SNSの強みではありますね。

 とはいえ、複数人体制や、それこそ団体として運営しているところであればともかく、中小以下の規模の大半のサーバでは、管理者ひとり、モデレータなしというところがほとんどなのではないでしょうか? そのようなサーバがなるべくコミュニティの質を良くするためにも、コミュニティ参加者の協力や、Mastodon自体が備えているユーザ登録の管理者承認制ないし招待制の機能の活用など、「あるものは何でも使う」精神でサーバを運営してゆく必要があるでしょう。

 そして、過去の議論の蒸し返しになりますが、そういった中小~零細規模のサーバが管理者、ユーザ問わず連帯するためにも、今後「日本語圏専用joinmastodon」が必要になるのではなかろうかと思います。本家の反差別の精神は継承しつつも、日本語圏の実情に合わせて、より中小以下の規模のサーバにフォーカスを当てたサーバリストが必要だと思います。もちろん、そのリストの中に差別容認を是とするところの入り込む余地を許してはなりません。

LGBTQ

This image is created by NMKD Stable Diffusion GUI.

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